ボローニャとパルマ。数年前までイタリア北部エミリア・ロマーニャ州のサッカー界を牽引していたのは、この2つのクラブだった。だがサッスオーロとカルピの躍進によって、この勢力図は塗り替えられつつある。
今季セリエA昇格を一番最初に決めたのはカルピだ。人口わずか7万人の小都市。その気になれば市民全員をオリンピコの観客席に収容できるほどの人数でしかない。世界的に人気のファッション・ブランド「ガウディ」の創設者、ステファノ・ボナチーニ氏がオーナーを務める。
カルピから直線距離で30kmにも満たない場所にある都市がサッスオーロだ。人口4万1000人という極めて小さな街のクラブでありながら、年間パス所有者の数は7700人を超える。建築関係の化学薬品を取り扱う大手企業「マペイ」のオーナーであり、イタリア経団連の会長も務める経済界の重鎮、ジョルジョ・スクインツィ氏が所有する。
まったく違う分野で成功を収めた実業家のクラブが、来季は揃ってセリエAを戦うことになる。パルマの財政破綻は誰もが知るところだが、「モッツァレッラの王様」とも呼ばれるカナダの大富豪ジョイ・サプート氏が買収したボローニャにもセリエA昇格の可能性は十分に残っている。
エミリア・ロマーニャ州の地方クラブが席巻するイタリアサッカー界。放映権ビジネスなど世界的な販売戦略を掲げるセリエAだが、その舞台で戦うクラブのローカル化が進んでいるのは皮肉な話だ。