ベニテス監督の退任が決まったナポリが後任候補として交渉を進めていたのは、セビージャの指揮官ウナイ・エメリだった。デ・ラウレンティス会長が直接交渉に臨んだものの、最終的には決裂。エメリ本人にセビージャ残留の理由を教えてもらおう。
―今やエメリの名は「勝利」と同じ意味を持つようになりました。
32歳から監督業を始めてアメリアやバレンシアを率いました。11年で4度のチャンピオンズリーグ出場、ヨーロッパリーグでは2度の優勝を手にしています。
―バレンシア時代から戦術はどの程度進化しているのでしょう?
当時の目標はチャンピオンズリーグに出場することでした。タイトルの獲得とクラブの財政状況は密接な関係にあるのです。プロの監督としてだけでなく、人間的にも貴重な経験になりました。
今振り返ってもバレンシアで、あれ以上の成果は望めなかったと思います。経済的な目標に固執するばかりで精神的な部分が疎かになっていた。セビージャではそれを両立できています。グループとしての結束、ファンが与えてくれる情熱が勝利に導いてくれる。
チャンピオンズリーグを優先
―さらに上を目指す気持ちがあるということですね。残留を選んだ理由は?
別のクラブに行くチャンスがあったのは認めます。サッカー界で成長するためには、そういった可能性の扉を常に開けておく必要があることも自覚しています。ですが、それはセビージャでも十分に叶えられる。チャンピオンズリーグにも出場するし、8月にはバルサとスーパーカップを戦うスペインで唯一のクラブです。
―主力流出がスーパーカップに影響すると不安になりませんか?
確かに昨年のレアル・マドリー戦の直前に、アルベルト・モレノがリバプールへの移籍を目前にしていることで起用を見送った経緯があります。8月31日までメルカートは開いていますが、昨年と同じような事態は何としても避けたい。
―数週間前にはナポリと交渉していましたが、結局はセビージャ残留を選びました。
デ・ラウレンティス会長には感謝しています。話し合い自体は素晴らしいもので、セビージャでは論争が起きる原因にもなりましたが…。ナポリには優秀な選手が揃っていて、その中の数人は私のよく知る選手たちです。セリエAという環境も魅力的だった。
会長と直接交渉できたのは好印象でしたし、将来を見据えればナポリからの誘いを断るのも難しい。でも今はセビージャを離れるタイミングではないと悟ったのです。ナポリが獲得できなかったチャンピオンズリーグ出場の夢をセビージャなら叶えられる。
2年前からミランと接触
―ミランとも接触していましたが、最終的には破談に終わりました。
2シーズンに渡って誘われていました。ミランほどのクラブが自分の仕事ぶりを評価してくれたのは本当に嬉しいし、感謝している。もちろん話を聞く用意はありましたが、セビージャで続けてきた地道な努力が、チャンピオンズリーグ出場という形で実を結ぶところだったのです。
―その一方でバッカのミラン移籍が決まりました。
成長を望む選手にとっては最高のお手本でしょう。バッカの長所は限界を定めずに貪欲な姿勢を貫くこと。セビージャでの活躍に繋がった理由でもあります。あれだけの選手と共に仕事をして、彼の成長に貢献できたのは私の誇りです。本人は最高のチャンスを手にして、セビージャには莫大な移籍金が入ります。
―その移籍金の使い道を教えてください。バッカの代役はインモービレですか?それともチチャリート?
この数年間でルイス・ファビアーノ、ネグレド、バッカが退団しました。これから私たちはバッカの代役を探すことになりますが、これまで獲得してきたのは、いずれも前任者と似たタイプの選手です。今後の成長を望み、ゴールという確かな結果を約束してくれる選手。インモービレもチチャリートも候補のひとりです。重要なのはハートであって、年齢ではありません。