発表された先発メンバーにはローマ出身の選手ばかりか、イタリア人の名前すら見当たらない。ゴール裏を分断する防護柵の設置に対して、抗議を続けるウルトラたちも観戦を拒否。異例づくしのダービーでローマが発揮したアイデアと力強さ、確固たる信念はラツィオを上回るものだった。あらゆる観点から見てローマの勝利は妥当な結果である。
さらに付け加えるなら前半早々、ローマの先制点となるPKを与えた主審の笛も試合結果に影響した。ジェコとジェンティレッティの接触はエリア外で発生したもので、PKに繋がるファールではない。あの誤審が起きるまでの10分間は特に大きなチャンスもなく、淡々と進んでいた試合がPK判定によって大きく動いたのは事実である。
ジェルビーニョの追加点
2つ目の分岐点もローマにとって良い方向に作用した。前半26分、フェリペ・アンデルソンが華麗な突破からシュートを放つも、クロスバーを直撃してノーゴール。この時間帯は高いクオリティを発揮したラツィオだったが、それでもロングボールに頼りすぎた感は否めない。中盤でプレスを受けない代わりに、全体を押し上げることもできなかった。
前半終了間際にはローマが立て続けに決定機を迎えるが、ジェコのシュートは枠を外れ、ナインゴランがエリア外から放ったシュートはポストを叩いた。今季のローマ対策として、常套手段とも言える高速アタッカーを封じる戦術をラツィオも採用した。ジェルビーニョのスピードに苦労する場面も多少見られたが、前半はおおむね機能していた。
しかし後半から重心を前に掛けると、後ろのスペースを狙われ続けた。ジェルビーニョが奪った追加点は、ナインゴランの縦パスに反応できずに裏を取られたセンターバック2名のミスであり、ニアサイドのケアを怠ったマルケッティにも責任がある。
ファルケに託された仕事
デ・ロッシとフロレンツィ(後半途中から出場)を怪我で、ピアニッチを出場停止で欠く苦しいメンバー構成を強いられたローマだが、中盤で輝きを放ったのがナインゴランだ。レジスタとして攻撃を組み立て、潰し屋として相手の突破を許さず、仕上げ屋としてジェルビーニョの追加点を演出した。コンビを組んだヴァンクールも素晴らしい仕事をした。
それでも戦術の鍵を握っていたのはファルケだろう。試合前日まで選択肢のひとつに過ぎなかったファルケだが、ガルシア監督は4-2-3-1のトップ下で先発起用。中盤の底からボールを供給するビグリアを徹底的にマークして、ラツィオのパス回しを分断するという重要な仕事を託し、本来アタッカーであるファルケもその役割を完璧にこなした。
ラツィオは最終ラインの不安定さに加えて、前線のクオリティ不足も目立った。先発したジョルジェヴィッチとカンドレーヴァはまったく存在感を発揮できないまま終わった。後半からケイタ、マトリ、クローゼを投入して4-2-4を敷いたピオリ監督だが、結局1ゴールも奪えないまま、ローマに今季2度目となる完封勝利をプレゼントしている。