サッリ監督の後任としてエンポリの指揮官に就任したジャンパオロは、エンポリを昨季に続く躍進に導いている。経済的に恵まれたビッグクラブとは違い、多くの若手選手を育てながら着実に勝ち点を積み重ねる地方クラブ。育成と結果を両立させるエンポリの秘密を、ジャンパオロ本人に教えてもらおう。
―ジャンパオロ、サッリ時代のチームから引き継いだものはありますか?
サッリ監督はエンポリで3シーズン指揮を執りました。選手の能力を見極めて調整するのではなく、トレーニングを通してチームを鍛えあげるタイプの指揮官です。サッリが残したものは、仕事に対して真摯に取り組む姿勢とプレーの基本概念。人よりもボールを中心に試合を作るという考え方です。
私の方針もよく似ています。ボールを中心に全員で考え、全員で走る。相手に主導権を委ねるのではく、自分たちでボールを回しながら試合をコントロールするのが基本的な考え方です。サッリ時代と比較してもパスの本数は多くなっていると思います。
―月末にはローマ戦が待っています。パレデスの状態はどうですか?
ローマ相手でも存分に戦ってくれるでしょう。非常に高い技術を持った選手で、当初はインサイドでの起用を考えて獲得しました。しかしパレデスにはインサイドの選手に必要とされる走力がなく、長い距離を走らせてしまうと彼の長所を潰してしまう可能性があったので、最終ラインの前に配置することにしました。
サッリの推薦で後任に
―指導者として、しっかりしたプロジェクトを持つクラブを率いるのは初めてでは?
エンポリには一貫した構想がありますが、同時に財政面での限界も理解しています。クラブとして経営していかなくてはならない一方で、ビッグクラブは優秀な若手をエンポリで成長させようと考えています。つまり私たちには論理的な判断が求められるのです。
試合でのパフォーマンスだけを評価するのではなく、火曜日・水曜日の練習でどれだけの動きを見せているのかも重要なのです。スポーツ・ディレクターも毎日のように足を運んで選手たちを見ています。こういった考え方を持つクラブは珍しいでしょうね。
―サッリ監督の後任に選ばれたのは、仕事の進め方が似ているからです。
昨年の1月にサッリから電話を貰い、自分が退団することになったら後任に私を推薦すると言われたのです。サッリとは数年前から知り合いでしたし、エンポリのカルリSDはシエナ近郊の出身で、私がシエナの監督を務めていた頃に注目していたそうです。
―サッリがナポリを退団する際には、また後任に推薦されるかもですね。
この成績なら当分辞めないでしょう(笑)
ベテランのようなドンナルンマ
―セリエAで注目している若手選手は?
ドンナルンマ。試合の流れを読む能力が飛び抜けています。まるで40歳のGKみたいですよ。ゴールマウスに立ってシュートに対応するだけでなく、常にバックパスを頭に入れて適切な位置に動くのです。どんな時でもチームの一部であることを忘れない。バルセロナが彼を狙っているという記事を読みましたが、この才能と無関係ではないでしょうね。
レイナも優れた足技を持ったGKです。あれだけの技術がなければ、ナポリは今ほど後ろで繋ぐこともなかったでしょうし、ロングボールに頼る場面も多く見られたと思います。
―レイナはボールを受ける段階で、次のパスコースを考えていますからね。
チームメイトもそれを理解しているのです。バルセロナではポゼッションの練習をする際にGKも参加します。GKコーチと練習するばかりではないのです。この方針はエンポリでも採り入れていますよ。