「自分の判断が間違っていたことを認めないといけない。私はローマ加入当初のシュチェスニーをまったく評価していなかった。あれから大きく成長し、今では絶対的な主力となった」。ブラジル代表GKアリソンとの定位置争いを制し、ローマの守護神として活躍するシュチェスニーについて元イタリア代表GKジョバンニ・ガッリに聞く。
―ガッリ、欧州全体で見るとシュチェスニーはどのレベルにあるのでしょう?
さすがにノイアーと同じ位置にいるとは言えない。それでも上位10人の中には確実に入るレベルだろう。今のシュチェスニーは完成度の高いGKだ。
―以前の彼に足りなかったものは?
アーセナルのトレーニング方法を私はよく知っている。実際に自分の目で見たからね。向こうではフィジカルを重点的に鍛えている。その一方でGKに必要な技術は教えていない。とはいえ、イングランドでは強靭なフィジカルが必要なのも事実だ。接触プレーでも審判が常にGKに有利な笛を吹いてくれるわけではないから。
―つまり?
ローマに来たばかりの彼は横方向の動きと、飛び出しのタイミングがまるで身に付いていなかった。イタリアでは育成年代のGKに教えるような知識だ。それだけにスパレッティ監督がシュチェスニーの起用にこだわる理由が理解できなかった。今思えば、間違っていたのは私だった。
イングランドのフィジカルとイタリアの技術
―ローマの幹部だったらシーズン終了後に保有権を買い取りますか?
移籍金次第だろう。1000万ユーロなら検討するが、3000万ユーロともなれば話は別だ。ローマにはアリソンもいる。一方でGKが特殊なポジションなのも事実だ。監督が信頼を寄せているなら、クラブとしては希望を叶えてあげるべきだと思う。安定したGKはチームの基盤となる重要な要素。ここ数週間のローマを見れば分かるだろう。
―守備も安定していて、相手に決定機を与えることも少ないです。
シュチェスニーの成長も大きく関係しているはずだ。ビッグセーブだけで失点を防ぐのではなく、最終ラインを上手くコントロールできている。こういうGKがいればチームメイトも不安を感じない。現役時代の私もセービングの技術は決して高くなかったが、DF陣を巧みに動かしてピンチを未然に防いだ。彼らも私を信頼してくれた。
―シュチェスニーの長所は?
技術的な部分で言えば足技だろう。イタリアに来てから特に成長した部分だ。しかし何より評価しているのは、様々な状況において冷静に対応できること。精神的に安定している証拠だよ。不安を抱えているGKはどうしてもプレーが臆病になるからね。