オリンピコで3失点の敗戦を喫し、続くフィオレンティーナ戦では3点をリードしながら、試合終盤の連続失点によって勝ち点1を得るに留まったジェノア。25節ナポリ戦を迎える頃には順位を6位にまで下げていた。それでも4位ローマとは勝ち点2差、5位フィオレンティーナとは勝ち点1差で、欧州大会の出場権は十分に射程圏内と言えた。
一方のナポリは上位進出どころか、カリアリやアタランタ、パレルモに続く10位と不振に陥っていた。ファンたちは一向に状態が上向かないチームとクラブに不信感を募らせ、ホームで迎えるジェノア戦は応援をボイコットするという噂まで飛び交った。
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試合開始からジェノアの選手がボールを持つと、強烈なブーイングを浴びせるサンパオロの観客たち。応援拒否はせず、試合中は選手を支えると決めたようだ。四方八方から口笛を叩きつけて、ジェノアの選手たちにプレッシャーをかける。
「パッラディーノにマンツーマンで付け!」
ナポリのレヤ監督がDFサンタクローチェに指示を出す。対峙するジェノアのFWパッラディーノはライン際に張るだけでなく、中盤に下がったり、中央に入ったりしてナポリの守備陣を撹乱していた。3バックの右で先発しているサンタクローチェが、パッラディーノを追いかけてハーフラインを越えていく。
試合序盤にセットプレーから決定機を作ったナポリだが、その後はジェノアの激しいプレスに苦しむ。厳しいマンツーマンの守備によってパスの出しどころを失ったナポリは、可能性の低いロングボールを蹴るばかりで、チャンスを作り出せない。
ハーフライン付近でボールを持ってもパスコースを見つけられず、横パスやバックパスを繰り返す選手たちを前に、観客席の不満が高まっていく。ファンのブーイングに怯えるようにロングボールを蹴り、簡単に跳ね返されてジェノアの攻撃を許す悪循環に陥っていた。
もはやスタディオ・サンパオロはナポリの味方ではない。自陣ゴール前で初歩的な判断ミスによって決定機を与えると、我慢の限界を超えたファンたちの怒りが口笛となってナポリの選手たちに降り注ぐ。ジェノアの枠内シュートは1本、ナポリはゼロという決定機の少ない前半が終わった。
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後半からナポリのレヤ監督はハムシクをエリア中央に配置し、ゴール前の密度を高めて先制を狙う。2トップのひとりであるデニスがサイドに流れても、ラベッシとハムシクの2人がエリア中央に残るようになる。際どいクロスがゴール前に連続して入ると、サンパオロの観衆から拍手が巻き起こる。
2トップの背後でトップ下のように振る舞うハムシクを止められないジェノアは、後半10分に両ウイングを同時に交代させて勢いを取り戻そうとする。
2ラインの間でフリーになったチアゴ・モッタからヤンコビッチに縦パスが出る。瞬間的にミリートと位置を入れ替えて3トップの中央に入ったヤンコビッチ。ワンタッチでDFカンナバーロをかわし、インサイドキックでGKナバーロの横を撃ち抜いた。後半24分にジェノアが先制。数分前の選手交代がゴールという最高の結果を生み出した。
先制点を奪われたナポリが怒り狂ったように猛烈な攻撃を開始する。しかし強すぎる攻撃の意識はリスクも大きい。高い最終ラインの裏を執拗に狙うミリート。かろうじて失点は回避できているものの、立て続けにジェノアが決定機を作り出すことで観客席の不満も高まっていく。
交代でベンチに下がるデニスとマッジョに猛烈なブーイングが叩きつけられる。攻撃を組み立てようと最終ラインでボールを回すだけで怒りの口笛が降り注ぎ、ナポリの選手たちのメンタルを削っていく。後ろでパスを回しても、ラストパスをミスしてもブーイングが巻き起こる。後半40分を過ぎてもナポリの枠内シュートはゼロのままだった。
試合終了の笛が吹かれると、ジェノアのベンチから控え選手たちがピッチになだれ込んで勝利を喜ぶ。白星を逃したナポリには猛烈なブーイングが浴びせられた。7試合勝利なしという状況ではファンの怒りが選手たちに向くのも致し方ない。