フェリペ・メロの決勝点でベローナに勝利したインテルは開幕5連勝で、ローマに勝ち点7差、ユベントスに10ポイント差をつけて首位を快走していた。2-1で競り勝った第2節カルピ戦を除けば、4試合すべてが1-0での勝利。あまりにも簡単に失点を重ねていた前季とは対象的に、インテルは堅い守備に支えられて好調を維持していた。
しかしながら一部のメディアはこの戦い方に疑問の目を向けていた。ミランを除けば戦力差のあるクラブ相手に薄氷の勝利を続ける状況に納得していなかったのだ。「あまりにもフィジカルに頼りすぎていて、美しさに欠ける」「守備は問題ないが攻撃は課題だらけだ」というのが、批判的なメディアの論調だった。
華麗なプレーでファンを魅了した現役時代のマンチーニからは想像もできないフィジカル重視の戦いぶりに、「現在のインテルでは、マンチーニは楽しくプレーできないだろう」と皮肉るメディアもあった。強固な守備に裏打ちされた〝ウノゼロ〟を美徳と捉えるイタリアであっても、そう考えない人間たちが少なからず存在するということだ。
ボールを使った美しい攻撃を信条とするクラブが賞賛される時代に、セリエAはまったく別のベクトルで進化の道を見出している。変幻自在な動きとは一線を画する〝明確さ〟も無視できないクオリティの一種であり、身体能力も優れた能力だ。派手な撃ち合いに歓喜するファンが多いのも事実だが、最少得点での勝利にも賞賛されるべき苦労がある。
「ウノゼロでの勝利を狙ってチームを作る指揮官などいないが、監督の仕事には様々な側面がある。守備に優れたチームを相手にする時はセットプレーに活路を見つけ、先制できれば今度はこちらが守備に比重を置いた戦術に切り替えることもある。人々が記憶するのは結果だけで、勝ち方など覚えていない」とプランデッリ監督は語っている。
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それだけに第6節フィオレンティーナ戦は予想外の結果となった。開幕5連勝を支えた強固な守備は見る影もなく、インテルは前半3分にPKで先制を許すと、最終的に4ゴールを奪われてフィオレンティーナとの首位決戦に敗れた。安定していた4バックを諦め、3バックの先発布陣を組んだマンチーニ監督の判断に試合直後から批判が集中した。
機能しない攻撃、フィジカル偏重の戦術、3バックへの変更……。5連勝を達成した監督とは思えないほどに批判を浴びたマンチーニは、翌週サンプドリア戦の前日会見でもメディアからフィオレンティーナ戦の采配ミスを指摘され、苛立ちながらこう反論した。
「勝敗の鍵を握っているのは監督や審判の判断ミス、対戦相手の優れた技術であってシステムではない。私は5連勝でも批判された。明確なアイデアを持っているので何を言われようと興味はないし、影響を受けることもない」
守備に比べて攻撃が機能していないのではないか、と質問を受けると「そのうち点も取れるようになるだろう。1ゴールしか奪えなくても試合に勝てるなら大歓迎だ」と切り返した。だが翌日のサンプドリア戦は先制を許す苦しい展開に。試合終盤にペリシッチが挙げた同点ゴールで、ジェノバから勝ち点1を持ち帰るに留まった。