「論争に加わるつもりはない。フリットやファンバステン、マルディーニ、バレージがいるチームなら私もサッキが望むような戦いを目指すだろう。だが現在のインテルは違う。自分たちよりも戦力が上のクラブと戦うなら、こちらが優位に立つのは難しい」
ナポリ戦終了後、元イタリア代表監督アリーゴ・サッキに「インテルの戦い方は古すぎる」と批判されたマンチーニはこう反論した。ボール回しのクオリティが低く、攻撃が手詰まりになる場面が多いことから、冬市場ではピルロやビグリアの獲得も噂されたが、マンチーニは「中盤を補強ポイントとは考えていない」と、きっぱり否定した。
11月末を迎えてもイカルディとヨヴェティッチの共存問題は続いていたが、インテルは新たな解決策を見つけつつあった。夏市場で獲得したリャイッチだ。ナポリ戦では追撃のゴールを決め、翌週のジェノア戦でもチームを勝利に導く決勝点を決めたリャイッチは前線の主力として考慮されていたが、11月に入るまでは事実上の構想外だった。
練習では熱量の足らない姿を見せるばかりで、試合でもボールを持った場面でしか走らない。アタッカー陣の序列で最下位となり、主力として起用されるイカルディやヨヴェティッチ、ペリシッチのプレーをベンチから眺める日が続いた。
「チームのために献身的なプレーを続けるなら試合に使う。そうでなければベンチに座り続けることになる。ドリブルを失敗しても構わないが、守備をサボることは許さない」。身勝手な振る舞いを続けるリャイッチに対して、マンチーニは起用方針を明確に告げた。上位争いを続けるチームの主力でありたいなら力を出し惜しみするな、と。
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サンシーロでジェノアに競り勝った翌週、インテルはウディネーゼから4点を奪って大勝した。不振に陥っていたイカルディが2ゴールを決めたことで、チームは新たな一歩を踏み出したかに思われた。だがこのウディネーゼ戦を最後に、インテルは下降線を辿ることになる。
失速の足音が最初に聞こえてきたのが年内最終戦のラツィオ戦だった。自慢の守備が乱れて前半早々に先制点を許したインテルは、その後も低調なプレーを続ける。リーグ7試合未勝利で解任の危機にあったラツィオのピオリ監督は、中盤の選手たちに早めのプレスをかける仕事を託してインテルの攻撃を的確に分断していった。
イカルディのゴールで後半途中に追いついたインテルだが、フェリペ・メロの軽率なプレーが試合を台無しにした。試合開始から精彩を欠くメロはPKを献上するミスを犯しただけでなく、試合終盤にはビグリアに対して悪質な蹴りを見舞って退場処分を受けた。急速に輝きを失うメロに釣られるように、インテルは年明けから調子を崩していく。