インテルのファンであることを以前から公言していたピオリ監督は、就任会見でもその手の質問を受けた。「実際にインテルを率いることになって心から喜んでいる。大きな責任を伴う仕事だが、クラブのために全力を尽くしたい。現実を見ていないわけではないが、CL出場権獲得を諦めてはいない。まだシーズン1/3が終わったところだ」
ピオリがチームを引き継いだ12節終了時点で、インテルは8位に沈んでいた。クラブ上層部はCL出場をシーズン目標に掲げていたが、開幕前にはマンチーニの説得に失敗し、急遽呼び寄せたデ・ブールも3ヶ月と保たずに解任。早急にチーム状況を改善させなければ、冬市場に望みを託すこともできないのがピオリ新監督の立場だった。
だが指揮官の置かれた状況は簡単ではなかった。リーグ中断期間とはいえ、多くの主力は代表チームに合流しており、短い準備期間で初陣となるミラノダービーに臨まざるを得なかった。宿敵ミランに敗れれば、クラブはさらなるプレッシャーと批判に晒される。チーム修復を円滑に進めるためにも、最悪の結果だけは避ける必要があった。
それだけにペリシッチの一撃は、ピオリを窮地から救うゴールとなった。後半ロスタイムの同点弾で敗戦を免れた指揮官は、急ピッチでチームの立て直しを図る。ハポエルに敗れEL敗退が決まり、12月上旬のナポリ戦は3失点の惨敗。監督交代からの1ヶ月は苦しい時期を過ごしたインテルだが、第16節ジェノア戦から猛烈な反発力を見せる。
ジェノア、サッスオーロ、ラツィオを下して3連勝でクリスマス休暇を迎えると、中断明けの4試合でも全勝。第23節ユベントス戦に敗れてリーグ連勝は7でストップしたが、年末ジェノア戦以降の10試合で9勝1敗。喫した失点もわずかに3と、シーズン前半戦とは見違える安定感を発揮して、気がつけば順位も4位にまで回復していた。
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ピオリは空中分解寸前だったチームを土台から変えた。デ・ブール前監督の信頼を得られていなかったペリシッチ、コンドグビア、ダンブロージオを主力として起用し、チーム内に新たなモチベーションと競争を生み出した。相手にスペースを与える場面も減り、ハンダノビッチの奇跡的なセーブに救われることも少なくなった。
アタランタから獲得したMFガリアルディーニの存在も大きかった。当初はクラブ上層部が投じた2750万ユーロという移籍金に対して、「あまりにも高すぎる」という批判的な声もあったが、高いボール奪取能力と長身を活かした空中戦、優れたポジショニングで瞬く間にチームの中心となったガリアルディーニには称賛の声が集まった。
11月のデ・ブール解任時には絶望視されていたCL出場権獲得が、3ヶ月後には達成可能な目標に変わっていた。開幕序盤からピッチ内外の混乱を批判するばかりだったメディアも、猛烈な勢いで順位を上げるインテルを絶賛するしかなくなった。首位ユベントスは独走態勢に入っていたものの、上位を争うローマとナポリは十分に射程圏内だった。