目指していたCL出場権獲得の可能性がなくなり、インテル上層部は目標をEL出場に切り替えた。監督交代の可能性を書き立てるメディアからピオリを守るように、指揮官としての立場を保証した。EL出場権さえ獲得してくれれば、翌シーズンも引き続きベンチを任せると約束したのだ。裏を返せば欧州大会への切符だけがピオリの命綱だった。
だがクラブ上層部の願いは届かず、チームはその後も転落を続ける。残留争いの真っ只中にいるクロトーネに敗れると首脳陣の怒りが爆発。試合翌日のオフを取り消し、懲罰的にトレーニングの実施を決める。順位表では7位に転落していたが、それでも翌週のミラノダービーで結果を出せば勢いを取り戻すこともできただろう。
それだけにミラン戦の試合結果はダメージの大きいものとなった。前半のうちに2点を先行しながら試合終盤に1点を返され、最後は後半ロスタイムに同点弾を浴びるという最悪のドローゲーム。敗戦を免れて歓喜するミラン陣営とは対照的に、観客席のインテル首脳陣は言葉を失い、イカルディも落胆を隠せずピッチに座り込むしかなかった。
痛恨の引き分けとなったミラン戦の翌週は、フィオレンティーナに5失点の敗戦を喫する。一度は逆転に成功しながら、後半途中から15分間で連続4ゴールを奪われる展開に。試合終盤にイカルディが追撃の2点を決めるも、勝ち点1すら手にできなかった。インテルとフィオレンティーナ、両チームが不安定な姿を晒すだけの試合だった。
フィオレンティーナ戦終了後、ロッカールームに戻ってきた選手たちにアウシリオSDが怒りをぶちまける。「こんな終盤戦はインテルに相応しくない。私たちも受け入れられない。確かにお前たちを選んだのは我々だ。だがこのクソみたいな状況を作り出した責任はお前たちにある。こんな醜態はもう沢山だ。プロとしての責務を果たせ」
ロッカールームの外にまで響き渡るアウシリオの怒号は10分近く続いた。選手たちは誰も口を開かず、うつむきながら叱責を浴びるしかなかった。一向にチームを立て直せないピオリ監督の責任を追求する声も出ていた。再び下部組織のステファノ・ヴェッキを招へいする可能性も囁かれたが、最終的にクラブ上層部はピオリ続投を決断した。