アウシリオSDの叱責はあったものの、クラブ上層部はピオリ監督の解任を見送った。クロトーネ戦翌日のような懲罰練習も課さず、逆に選手たちをリフレッシュさせるべく2日間のオフを与え、練習再開から5日間の緊急合宿を組んでナポリ戦に臨んだ。だが合宿の甲斐もなく、カジェホンの決勝点によってインテルはサンシーロに沈んだ。
その翌週も残留争いを続けるジェノアに敗れ、チームは復調の兆しすら見せない。進退について質問を受けたピオリは、「辞任など考えたこともない。なぜそういった噂が広まっているのか理解できない」と語った。真相は定かでないが、フィオレンティーナ戦後にピオリが辞任を申し出て、クラブ上層部に留意されたという報道も出ていた。
もっとも、ピオリ辞任騒動の真相など大した問題ではなかった。ジェノア戦から2日後にインテル上層部が監督交代を決意したからだ。7ゴールを挙げて大勝したアタランタ戦以降の7試合で2分け5敗、白星を積み重ねた数ヶ月前の勢いを取り戻せないままピオリは解任。残り3試合はステファノ・ヴェッキが指揮を執ることになった。
デ・ブール解任からピオリ就任までの2試合で暫定監督を務めたヴェッキ。大役をまっとうした数カ月後に、再びトップチームの指揮を命じられるとは思わなかっただろう。相次ぐ監督交代にファンたちの怒りも頂点に達した。ヴェッキ監督にとって〝2度目の初陣〟となったサッスオーロ戦は、我慢を続けていたファンたちの不満が爆発した。
「現在のインテルは我々が応援するに値しない。今日の観戦は遠慮してランチに行くとしよう」。そう書かれた横断幕を残し、ウルトラは午後12時30分キックオフのサッスオーロ戦の応援をボイコットした。北側ゴール裏が空席になっても、選手たちはインテリスタの怒りから逃れられない。スタメン発表からサンシーロは不満の口笛に包まれた。
観客席の重苦しい空気に呑み込まれるように、ピッチ上の選手たちも低調なパフォーマンスを続けるばかり。先制を許したまま前半終了を迎えると、観客席から怒りの口笛が叩きつけられる。後半開始に向けて選手がピッチに姿を見せた途端、再び猛烈なブーイングが巻き起こった。結局チームは劣勢を跳ね返せないままサッスオーロに敗れた。
もはやインテルに目標などなかった。残された2試合に勝利したことが唯一の慰めである。19勝14敗5分けで7位。CLどころか、最低目標であるEL出場権すら獲得できずにシーズン終了を迎えた。ピオリが成し遂げた驚異的な連勝は記憶の片隅に追いやられ、蘇寧グループ最初の1年となった2016-2017シーズンは、悲惨な1年と記録されるだろう。