「サッカー界では契約満了を迎える場合とそうでない場合がある」
2009年5月上旬――。月末のシーズン終了まで数週間となった時期に、サンプドリアのゼネラルディレクターを務めるジュゼッペ・マロッタはそうコメントした。ワルテル・マッツァーリ監督との契約はあと1年残っているが、新たな指揮官を迎えて2009-2010シーズンに臨む可能性を否定しなかった。
「焦点はプロジェクトを共有できるかどうかだ。できなければ別の選択肢を探すことになる。いずれにしても現在の監督はマッツァーリ。コッパ・イタリア決勝が終わってから話し合う予定だが、その試合結果だけで判断を下すことはない」
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2007年の夏、サンプドリアの監督に就任したマッツァーリ。1年目はリーグ6位という好成績を残したものの、2年目となったこのシーズンは低迷が続き、5月に入った段階でサンプドリアにとって意味のある試合は、決勝進出を勝ち取ったコッパ・イタリアだけとなっていた。
だが5月12日の決勝戦は辛い結末を迎えた。PK戦の末、ラツィオに敗れて念願のタイトルには手が届かなかった。この敗戦がクラブ上層部の判断にどの程度影響したのかは定かでない。だがマロッタGDの言葉通りコッパ・イタリア決勝戦以降、マッツァーリ退任の噂が飛び交うようになった。
コッパ・イタリア準優勝という成績は残したものの、低空飛行が続くリーグ戦の戦績を考えれば、クラブ側がマッツァーリ続投を決意する理由は多くなかった。複数の指揮官が後任候補として挙がったが、中でも有力視されていたのはラニエリとデル・ネーリだった。
ラニエリはユベントスの監督を解任されたばかりで、デル・ネーリはシーズン終了後にアタランタの監督を退任することが決まっていた。どちらも4バックを志向する指揮官で、一貫して3-5-2を採用するマッツァーリとは異なる。サンプ上層部が新しいサイクルを求めているのは明らかだった。
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それまでマッツァーリは、「サンプとの契約は翌シーズンまで残っている」と監督交代の噂を否定していた。だが5月下旬になるとマッツァーリ退任とデル・ネーリ就任は既定路線となっていた。5月31日のリーグ最終節カターニャ戦後、マッツァーリ本人が監督退任を明らかにした。
「クラブ発表より先に自分でお伝えしたい。合意の上でサンプドリアとは別の道を歩むことにした。スタッフや選手にこの場を借りてお礼を言いたい」。そうコメントして、マッツァーリは2シーズン率いたサンプを去った。
デル・ネーリも最終節インテル戦終了後、「アタランタの監督ではなくなる」と退任を表明した。メディアから来季の仕事場について質問を受けた時には「数日後にハッキリする」と明言を避けたが、行き先がサンプドリアであることは周知の事実だった。
リーグ最終節の翌日、デル・ネーリのサンプドリア監督就任が発表された。