アッレグリとサッリ、大きく異なる2人の戦い方に関する論争は興味深いものだった。私の立ち位置はちょうどその中間にある。組織としてのプレーを強く信じており、選手たちがピッチで何をすべきか明確に理解している状態が理想だ。これはシステム的な話ではない。試合の中で今はどういった状況なのか、選手たちが把握しているという意味だ。
最初に言っておきたいのは、どの監督もできるだけ良い内容のサッカーで勝てるよう準備しているということだ。守備と攻撃、どちらの局面でもどう動くべきか選手たちに伝えなければならない。監督であるなら守備と攻撃を分けて考えることはできないということだ。少なくとも私は両方を考えながらチームを作っている。
だがすべての物事が予定通りに進むわけではない。時間帯によっては厳しい状況に追い込まれることもある。怪我人が出たり、選手の状態が上がらない時期も長いシーズンにはつきものだ。何としても順位を上げなければいけない場合もある。成績不振に陥っている時はどうしても目先の勝利が優先されるし、クラブ側からも結果を要求されるわけだ。
目先の勝利が必要な状況もある
私の経験を元に分かりやすく説明しよう。シーズン途中にベンチを任された場合、アイデアを植え付ける時間はあまりない。こういう状況では自分の理想にこだわらず、別の解決策を探すことになる。長らく勝利から遠ざかっているチームに必要なのは結果だ。順位を上げるだけでなく、チームが壊れてしまうのを防ぐためにも、まず勝利が必要とされる。
サッリがナポリで表現していたようなサッカーをするには数ヶ月、年単位の時間が必要になる。だがすぐに結果が必要とされる状況だと、それだけの猶予はない。監督として優先される仕事はチームに組織と方向性を与えることで、良いサッカーをして勝とうという考えなど持てなくなるものだ。
時間的な余裕があれば話は変わってくる。パスを回しながら主導権を握るサッカーは私も好きなのだ。そういう戦い方を貫いた時期もある。パレルモがそうだった。開幕前から準備する時間を与えられていたから、シーズンを通してチーム全体が連動するサッカーをしながら結果を出した。サンプドリアでもシーズン後半戦はそういった戦い方ができた。
良いサッカーの基準はバランスとアイデア
「良いサッカー」とはどういうものか。自分たちと対戦相手、どららがボールを持っていてもバランスを失わないサッカーだと私は考えている。加えて豊富なアイデアを持っていること。最後の25mで創造性を発揮できる状況を作り出せるサッカーだ。
こういった要素をすべて備えていたたチームも存在した。例えばサッキが率いていたミランだ。それ以外にも不当に低い評価を与えられているチームがある。リッピのユベントス、カペッロのローマがそうだ。この2チームはサッキのミランとは異なる戦い方だったが、試合に勝つ方法を知っていた。何よりアイデアが豊富だった。