――現役時代の話題が出ましたが、当時は選手と監督の距離が今よりも遠い印象があります。
現代の監督に必要なのは、アスリートたちと強固な関係を築くことだ。そのためには正直であり、誠実でなければいけない。例えば私は意味もなくロッカールームに入るのを好まない。アシスタント陣にも入ってほしくない。あの場所は選手たちの家だから。
――練習スタイルも変わりましたか?
70%はボールを使い、残りの30%はボールを使わないメニューを組む。今でもこの方針を貫いている。強度の高いプレスをかける練習もしているが、試合でどういう戦いをするのかが重要だ。何度も繰り返すようだが結局は選手の特徴次第だから。
高い位置からプレスをかけることが正解とは限らない。今季の私たちもそうした戦いをすることがあったが、結局はメダルの表と裏のようなものだ。早めにプレスをかければ、後方に大きなスペースが生まれることになる。たった2本のパスで突破されてしまうことだってあるんだ。重心を下げて戦った方が合理的な状況もあるということだね。
――試合の分析については?
対戦相手がどのようにこちらを攻略してくるのか、逆に相手をどのように攻略するのかを見る。トレーニングにはドローンも導入しているし、試合でのプレーを編集したビデオクリップを選手たちに渡すこともある。かなり評判が良くて、映像が欲しいと頼まれることも珍しくない。どの選手も自分の改善点を把握したがっている証拠だよ。
チーム全体のビデオ分析は週に2回。ひとつは自分たちの映像、もうひとつは対戦相手の映像を見ながら選手たちにポイントを伝える。
――カップ戦がない週はどのように過ごしていますか?
日曜日に試合があれば、翌日は回復トレーニングを行う。試合に出ていない選手には負荷の高いメニューを消化させる。火曜日はオフで、水曜日は有酸素運動と技術・戦術練習。木曜日は二部練習をすることもある。各パートに分かれた練習を午前中にして、午後は筋肉に負荷をかける。
この日から対戦相手を意識した練習が入ってくるわけだが、メニューに組み込むのが木曜日というだけで分析自体はもっと前から始まっている。金曜日にはセットプレーの守備と、試合に向けたフィジカル調整。試合前日となる土曜日に仕上げの練習だ。